新NISAで人気の高い投資信託のひとつが、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」です。
日本を含む世界中の株式へ幅広く分散投資できるため、
「新NISAはオルカンだけでいい」
「初心者ならオルカンを積み立てておけばいい」
という話を聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし、オルカンへの積立を何年も続けて資産が増えてくると、こんな疑問が出てくるかもしれません。
「いつかオルカンを卒業したほうがいい?」
「40代、50代になったら株式100%は危険?」
「老後までオルカンだけで本当に大丈夫?」
結論から言えば、年齢が上がったからという理由だけで、必ずオルカンを卒業する必要はありません。
一方で、老後が近づいたり、近いうちに使う予定のお金が増えたりした場合には、資産全体のリスクを見直すことも重要です。
つまり大切なのは、
「オルカンを卒業するかどうか」ではなく、「いつ使うお金なのかを考えて資産配分を調整すること」
です。
この記事では、
- オルカン卒業とは何なのか
- オルカンをずっと持ち続けてもいいのか
- 40代・50代で考えたいこと
- 老後が近づいたときのリスク管理
- オルカンを売らずにリスクを下げる方法
- オルカン卒業を検討したほうがいい人
について、初心者向けに分かりやすく解説します。
そもそも「オルカン卒業」とは?
「オルカン卒業」という言葉に、正式な定義があるわけではありません。
一般的には、
オルカン中心の資産形成から、債券や現金などを組み合わせた運用へ移行すること
などを指して使われます。

例えば30代、40代では、
オルカン80%+現金20%
だった人が、老後が近づくにつれて、
オルカン60%+現金・債券40%
のように資産配分を変えていくイメージです。
必ずしも、
「オルカンを全部売る=オルカン卒業」
と考える必要はありません。
むしろ、長期投資ではオルカンを保有したまま、現金や債券などを増やして資産全体のリスクを調整する方法もあります。
オルカンそのものが年齢とともに悪い商品になるわけではありません。
変わるのは、自分の年齢や資産額、お金を使うまでの期間です。
オルカンは何歳まで持っていてもいい?
「50歳になったらオルカンをやめる」
「60歳になったら株式投資を卒業する」
というように、年齢だけで決める必要はありません。

例えば同じ60歳でも、
Aさん:65歳から投資資産を取り崩す予定
Bさん:75歳まで投資資産を使う予定がない
では、運用できる期間が大きく違います。
Bさんの場合、60歳になったとしても、そのお金を使うまで15年以上あります。
そのため、
「何歳になったか」より「そのお金を何年後に使うのか」
を考えることが重要です。
一方で、数年以内に必要になるお金までオルカンに入れておくのは注意が必要です。
オルカンは世界中へ分散投資できますが、基本的には株式へ投資する商品です。
世界中へ分散されているからといって、暴落しないわけではありません。
例えば老後直前に大きな暴落が起きれば、資産額が大幅に減る可能性もあります。
だからこそ、
長期間使わないお金 → オルカンなどで運用
近いうちに使うお金 → 現金など値動きの小さい資産で確保
というように、お金を使う時期によって分けて考えることが大切です。
↓そもそもオルカンだけで長期投資を続けて大丈夫なのか不安な方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。↓

「オルカン=安全」ではない
オルカンは非常に多くの企業へ分散投資できるため、
「世界中に分散されているから安全」
というイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、ここは注意が必要です。
オルカンは幅広く分散されていますが、株式中心の投資信託であることに変わりはありません。
世界的な金融危機などが起これば、多くの国の株価が同時に下落することもあります。
そのため、
「オルカンなら暴落してもほとんど下がらない」
という商品ではありません。
特に資産形成を始めたばかりで、
100万円 → 70万円
になった場合と、
長年積み立てて、
3,000万円 → 2,100万円
になった場合では、同じ30%の下落でも金額のインパクトは大きく違います。
資産額が大きくなるほど、
「900万円も減った」
という心理的な負担も大きくなるでしょう。
さらに、その900万円を近いうちに生活費として使う予定だった場合、問題はより大きくなります。
だからこそ、資産が増えてきた段階では、
「どれだけ増やせるか」だけではなく「暴落したときにどれだけ減っても大丈夫か」
を考えることが重要になってきます。
↓オルカンも株式へ投資する商品なので、大きな暴落は避けられません。過去の暴落や下落時の考え方はこちらで詳しく解説しています。↓

オルカンを無理に卒業する必要はない
ここまで読むと、
「じゃあ年齢が上がったらオルカンを売ったほうがいいの?」
と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
例えば、
- 生活防衛資金を十分に確保している
- 10年以上使わないお金で投資している
- 暴落しても慌てて売らない
- 老後も長期間運用を続ける予定
- 株式の値動きを理解している
という人なら、50代、60代になってもオルカンを保有し続けるという考え方はできます。
重要なのは、
「年齢が上がったからオルカンを卒業する」
という単純な考え方ではありません。
自分がいつお金を使うのか。
どのくらいの下落まで耐えられるのか。
生活費として必要な現金はいくらなのか。
これらを考えたうえで資産配分を決めることが重要です。
また、リスクを下げたいからといって、これまで積み立てたオルカンを一気にすべて売却する必要もありません。
実は、オルカンを売却せずに資産全体のリスクを少しずつ下げる方法もあります。
40代・50代からは「資産配分」を意識しよう
オルカンを長期間積み立てていると、少しずつ資産額が大きくなっていきます。
そこで40代・50代から意識したいのが、オルカンだけを見るのではなく、資産全体のバランスを見ることです。
例えば、
オルカン2,000万円
現金1,000万円
を持っている人なら、金融資産全体ではおよそ、
株式67%・現金33%
となります。
証券口座を見ると「オルカン100%」に見えても、現金を含めれば資産全体が株式100%とは限りません。
この考え方はとても重要です。
老後が近づいたからといって、
「オルカンを半分売らなければ!」
と慌てる必要はありません。
まずは、
預貯金はいくらあるのか
退職金はいくら受け取る予定なのか
年金はいくらくらい受け取れそうなのか
今後大きな支出を予定しているか
などを整理しましょう。
そのうえで、
暴落してオルカンが大きく値下がりしても、生活に困らない状態になっているか
を考えます。
オルカンだけではなく、家計全体で考えることが大切です。
オルカンを売らずにリスクを下げる方法もある
「株式の割合を減らしたい」
と思ったとき、最初に考えるのがオルカンの売却かもしれません。
しかし、方法はそれだけではありません。
例えば現在、
オルカン80%
現金20%
という資産配分だったとします。
今後はオルカンへの新規投資を少なくして、貯金や債券などへ回す金額を増やします。
すると、オルカンを売らなくても徐々に、
オルカン70%
現金・債券30%
さらに、
オルカン60%
現金・債券40%
というように資産全体の割合を変えていくことができます。
つまり、
「今持っているオルカンを売る」のではなく、「これから入ってくるお金の行き先を変える」
という方法です。
特に老後までまだ時間がある場合は、急いで資産配分を変更する必要がなければ、このように少しずつ調整する方法も考えられます。
新NISAでは非課税保有限度額があるため、売却する前に「本当に今売る必要があるのか」を考えることも大切です。
↓資産配分を変えるためにオルカンを売るべきか迷っている方は、新NISAの売却タイミングについても確認しておきましょう。↓

老後が近づいたら「使う予定のお金」を分けておく
オルカン卒業を考えるうえで特に重要なのが、老後直前・老後開始後の暴落への備えです。
例えば60歳で退職し、生活費として毎年300万円を投資資産から取り崩す予定だったとします。
ところが退職直後に大きな暴落が起きたらどうでしょうか。
資産が大きく減っている状態でも、生活するために売却しなければならない可能性があります。
これを避けるために考えたいのが、
近いうちに使う予定のお金を、あらかじめ現金などで確保しておくこと
です。
例えば老後の生活費について、
近いうちに使う分 → 現金など
当面使わない分 → オルカンなどで運用
というように分けておきます。
そうすれば暴落したときでも、
「今はオルカンを売らず、現金から生活費を出そう」
という選択肢を持ちやすくなります。
市場が回復するまで待てる余裕を作るわけです。
もちろん、何年分の生活費を現金で持つべきかに全員共通の正解はありません。
年金収入や毎月の支出、その他の資産によって必要な金額は変わります。
大切なのは、
「暴落したら生活費がなくなる」という状態を避けること
です。
債券を組み合わせるという選択肢もある
資産全体の値動きを抑えたい場合、現金だけではなく債券を組み合わせる方法もあります。
一般的に債券は株式とは異なる値動きをすることがあり、株式だけを保有する場合と比べて資産全体の値動きを抑える目的で使われることがあります。

例えば、
オルカン100%
から、
オルカン70%+債券30%
のように変更する考え方です。
ただし、
「債券なら絶対に値下がりしない」
というわけではありません。
債券にも金利変動や信用、為替などによるリスクがあります。
そのため、
「50代になったから、とりあえず債券を30%買う」
と年齢だけで決めるのではなく、商品の特徴を理解して取り入れることが大切です。
また、値動きを抑えることを最優先するお金であれば、預貯金や個人向け国債などを含めて検討する方法もあります。
「年齢=株式の割合」で決めなくてもいい
資産運用では、
「年齢が上がったら株式の割合を減らす」
という考え方があります。
これはひとつの考え方として参考になりますが、全員が同じ割合にする必要はありません。
例えば同じ55歳でも、
Aさん
・十分な預貯金がある
・退職金を受け取る予定
・年金で生活費の多くを賄える
・オルカンは当面取り崩さない
という人と、
Bさん
・現金がほとんどない
・退職後すぐ投資資産を取り崩す
・毎月の生活費の多くを投資資産に頼る
という人では、取れるリスクが違います。
Aさんならオルカンの割合を比較的高く保つという選択も考えられます。
一方、Bさんが株式中心の資産配分にしていると、退職直後の暴落によって生活設計に大きな影響が出る可能性があります。
つまり、
「50歳だからオルカン○%」
「60歳だから株式○%」
と機械的に決めるのではなく、
自分がどのくらいのリスクを取れる状態なのか
を考えることが重要です。
オルカン卒業で本当に考えるべきなのは、年齢そのものではありません。
「暴落しても予定どおり生活できる資産配分になっているか」
です。
では具体的に、どんな人ならオルカンを持ち続けやすく、どんな人なら「オルカン卒業」を検討したほうがいいのでしょうか。
オルカン卒業を検討したほうがいい人
ここまで解説してきたように、年齢が上がったからといって必ずオルカンを卒業する必要はありません。
ただし、次のような人は資産配分を見直すタイミングかもしれません。

1.数年以内に使う予定のお金が多い人
住宅購入やリフォーム、子どもの教育費、老後の生活費など、数年以内にまとまったお金を使う予定がある場合は注意が必要です。
オルカンは株式へ投資する商品なので、必要になる直前に大きく値下がりする可能性があります。
例えば5年後に500万円必要なのに、その500万円までオルカンで運用していた場合、使う直前に暴落すると予定どおりのお金を準備できない可能性があります。
近いうちに使うことが決まっているお金は、徐々に現金などへ移しておく
という考え方も必要になります。
2.暴落すると生活に影響が出る人
資産形成中は、暴落しても積立を続けながら回復を待つことができます。
しかし、老後に投資資産を取り崩して生活するようになると状況が変わります。
例えば3,000万円のオルカンが大きく下落したうえに、そこから毎年生活費を取り崩すことになれば、資産の減少が早くなる可能性があります。
そのため、投資資産に生活費の多くを頼るようになる前には、現金などを確保しておくことも検討しましょう。
3.資産の値下がりが精神的に耐えられなくなった人
若い頃は、
「暴落しても20年以上あるから大丈夫」
と思えていても、老後が近づくにつれて考え方が変わることがあります。
例えば5,000万円まで増えた資産が30%下落すると、
5,000万円 → 3,500万円
となり、評価額では1,500万円減ります。
実際にこれだけ資産額が動けば、不安になる人もいるでしょう。
値下がりが怖くなり、暴落するたびに売却したくなるのであれば、株式の割合が自分のリスク許容度に合っていない可能性があります。
その場合は、現金や債券などを増やして値動きを抑えることも選択肢です。
オルカン卒業が必要ない人
反対に、オルカンを無理に卒業する必要がないケースもあります。
例えば、
・生活に必要な現金を十分確保している
・オルカンのお金を10年以上使う予定がない
・暴落しても生活に影響しない
・長期的な成長を期待して運用を続けたい
・株式のリスクを理解している
といった人です。
特に重要なのが、運用できる期間です。
60歳になったとしても、すべての資産を60歳で使うわけではありません。
老後が20年、30年続くことを考えれば、70代、80代になってから使うお金もあります。
そのため、老後に入った瞬間に、
「投資を全部やめて現金にする」
必要があるとは限りません。
近いうちに使うお金を現金などで確保しながら、当面使わない資産については運用を続けるという考え方もできます。
「オルカン卒業」ではなく「オルカンとの付き合い方を変える」
ここまで考えると、必ずしも「オルカン卒業」という言葉にこだわる必要はありません。
資産形成期には、
毎月オルカンを積み立てる
というシンプルな方法だったとしても、老後が近づけば、
オルカンを保有しながら現金を増やす
新規積立の一部を債券などへ回す
使う予定のお金だけ少しずつ現金化する
というように、運用方法を変えることができます。
つまり、
オルカンを「持つ・持たない」の二択ではない
ということです。
例えば老後に必要な生活費の一部を現金で確保し、それ以外の資産はオルカンで運用を続ける方法もあります。
こうすれば暴落時に無理にオルカンを売却するリスクを抑えながら、長期運用を続けることができます。
資産形成期から取り崩し期へ移るにつれて、少しずつオルカンとの付き合い方を変えていくイメージです。
オルカンを売るタイミングは「年齢」だけで決めない
では、オルカンはいつ売ればいいのでしょうか。
「60歳になったら売る」
「退職したら全部売る」
と決めるよりも、
お金を使う時期から逆算する
という考え方が重要です。
例えば老後に旅行するためのお金が必要になった。
住宅のリフォームをすることになった。
生活費として取り崩す時期になった。
こうした「お金を使う目的」が売却を考えるひとつのタイミングになります。
また、資産配分が自分の想定以上に株式へ偏った場合に、一部を売却してバランスを調整する方法もあります。
一方、
「最近株価が上がったから全部売る」
「暴落しそうだから一度売る」
というように短期的な相場を予想して売買を繰り返すと、再び投資するタイミングも判断しなければならなくなります。
長期投資では、相場の天井や底を正確に当てることよりも、自分のお金をいつ使うのかを基準に考えるほうがシンプルです。
↓相場の値動きを理由に積立をやめてしまうと、その後の回復局面を逃す可能性もあります。積立を続ける考え方はこちらの記事で解説しています。↓

まとめ|オルカンは無理に卒業しなくてもいい
今回は、「オルカン卒業は必要なのか?」について解説しました。
最後にポイントを整理します。
✅ 年齢だけを理由にオルカンを卒業する必要はない
✅ オルカンは分散されていても株式中心なので暴落する可能性がある
✅ 年齢より「そのお金をいつ使うのか」を考える
✅ 老後が近づいたら近いうちに使うお金を現金などで確保する
✅ オルカンを売らず、新しく入ってくるお金で資産配分を調整する方法もある
✅ 現金や債券を組み合わせて資産全体の値動きを抑える方法もある
✅ 老後も当面使わない資産は運用を続ける選択肢がある
オルカンを始めたからといって、
「いつか必ず卒業しなければならない」
わけではありません。
大切なのは、オルカンを持っているかどうかではなく、
暴落が起きても生活に困らない資産配分になっているか
ということです。
資産形成を始めたばかりの頃は、「どうやって増やすか」を考えることが中心になります。
しかし、資産額が増えて老後が近づいてきたら、
「増やすこと」+「必要なときに安心して使えること」
の両方を考える必要があります。
オルカンを全部売るのではなく、近いうちに使うお金だけを現金などへ移し、長期間使わない資産は運用を続ける。
そんなふうに、ライフステージに合わせてオルカンとの付き合い方を少しずつ変えていくことが、長期投資では大切です。

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